十二話「真名を知る者」
大神神社に住まう狼とイヌを司る神であり――常沖と常成にとっては祖父のような存在である、おんじ視点。
大きい白い狼の姿のおんじは境内でのそりと寝っ転がっていた体をゆっくり起こす。
久々に、社の外へ出た。
霊力と神力の入り混じった、喜助が張った結界がある。
わずかな綻びを見つけ、おんじはただ視線を向けるだけでそれを繕った。
そのまま、思考に沈む。
常沖は転移者だ。望んで来たわけではない。
おんじが存在していたがゆえに起こった悲劇とも言える――絢香が寝込んだ末の転移。
おんじ自身が二千年前、あの隊長格の長に滅ぼされた種族であり(滅却師(クインシー)とは違う)、この一族は世界渡りの血を持ち、幾つもの世界を跋扈(ばっこ)してきた。その主がおんじ。
子孫だけは逃がし、自分は拠り所としてこの世界に残った。
満を期して、おんじの存在を確定させてくれる器、絢香を迎えた。
だが――誤算があった。
絢香はこの世界の重要人物と縁を結び、さらに子までなした。それが良きか悪しきか、当時は分からなかった。
その男は、生まれながらの怪物だった。
すぐにおんじの存在に気づいた。年齢にそぐわぬ頭脳。
あれほど背筋がひやりとしたことは後にも先にもない。ほんに、怖いクソガキじゃった。
その男――浦原喜助はおんじと取引をした。
「役割が終わったなら、絢香と共に暮らさせてほしい」と。
常沖の隠していた真名・『絢香』を、何故かすでに知っていた。
娘が一度だけ「真名は大事」と口にしたことがある。それを手掛かりに調べ上げ、いつでも縛れる位置にいたというわけだ。
おんじは悟った。この男だけは敵に回しちゃならん、と。
「夫ならば、妻と娘を守るのは当然の務めよ。そなたは誓った。違えるな」
威厳を含ませつつ釘を刺した。喜助は気づいてくすりと笑ったが、おんじは平静を装ったまま、内心では震えた。
子孫は守る。害する者は許さぬ。
そのための犠牲ならば、絢香が不幸になることはない――そう判断しての取引だ。
ただ、一つだけ問題がある。姉が許すかは別の話。
……まあ、頑張れや。
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BLEACHの二次創作です。
浦原喜助の娘で、成長物語です。
※オリジナルキャラ視点です。