No.1193830

蓮が咲き行く道へ十五話

BLEACHの二次創作です。
浦原喜助の娘で、成長物語です。

2026-09-27 14:42:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:45   閲覧ユーザー数:45

十五話「語られる過去、消えゆく今」

 

 織姫、チャド。

 この二人は原作だと、雨竜が一護に死神を憎むあまり勝負を仕掛け、『対虚(ホロウ)用撒き餌』を使ったことで街に虚(ホロウ)が溢れ、危機に陥った際に霊力の才能が開花する。

 ――でも私は、雨竜にそんなことはしてほしくなかった。

 だから織姫とチャド(彼とは中学時代から面識があり、一護も織姫も雨竜も普通に仲良くしている)を呼び出し、雨竜も混ぜて密かに修行をさせている。

 

 織姫の兄・昊(そら)は、てて様が直々に指導中。見どころがあるらしい。昊さん、本当に刀も弓も扱えるから教えがいがあるんだとか。……伊達にあの酷い家庭で織姫だけ連れて逃げ出し、一人で働きながら育ててきたわけじゃない。根性があるんだよな。

 

 なんか、一護の重要イベントをことごとく壊してる気がする。

 でも――街が危険になれば、奔走するのはてて様だ。

 今はかか様に付き添ってもらいたい。てて様の負担を増やしたくない。

 

 かか様は、いつ消えてもおかしくない。夜一さんが戻る前に義骸が保てる保証もない。

 私だって気が気じゃない。でも原作は待ってくれない。

 尸魂界(ソウルソサエティ)編に入る。

 何が何でも、彼らを鍛えなければ――その焦燥だけが胸を掻きむしっていた。

 

 ※

 

 ある日のこと。

 みんながてて様が無断で作った地下空間で修行している間、私は久々に店番に立っていた。珍しく起きてきたかか様と一緒に。

 私が商品棚を入れ替えていると、

 

「成(なり)」

 

 背後から、かか様の声が降ってきた。

 

「どうしたの? やっぱり店番は身体に響く?」

「ううん。……お前の前世の話が聞きたいんだ」

 

 ぼんやりしているのに、その瞳だけは意思を持っていた。

 かか様が前世のことに触れてくるのは初めてで、私は驚いた。けれど声色は変えずに問い返す。

 

「私の前世? かか様、聞きたいの?」

「うん。私が消えたとき、あちらでお前を探す手掛かりになるかもしれないから」

 

 かか様はいつも私を否定しない。でも、自分のために利用しようともしない。

 ――きっともう、自分の残り時間が分かっているのだろう。

 私は手を止め、かか様のとなりに腰を下ろした。

 

「うーん……いいけど。長いよ?」

「構わない。私は、お前の前世も今のお前だと思っているから」

「私はね、津井原ミツケって名前で生まれたよ。性別は女。学園都市の外の普通の家庭で育ったけど、超能力に憧れて研究者として入ったの。審査も検査も面倒くさかったけど、なんとか潜り込んで……そこで教師をしながら、子ども達を研究した。最低でしょ?」

「いや、喜助も研究馬鹿だったからシンパシーはある。けど、罪悪感はなかったのか?」

「なかった。研究が楽しくて……子ども達は作品で、教え子で、興味の対象だったから」

「なるほど、悪人ってほどでもないんだな」

「え? 結構悪いと思うよ。唯一保護した子のことなんて最高傑作って思ってたもん。でも一番可愛かった。自慢だった」

「成は、その子を一番可愛がっていたんだな。親だったわけか」

「親、だったのかな……。あの子にしてあげたいこと、いっぱいあったのに。実験の途中で死んじゃって、それが今でも後悔」

「……成は、私と喜助の子として生まれて幸せか?」

「幸せ。いちばん幸せ。かか様もてて様も優しい」

「私達は優しいだけじゃないんだけどな……」

「そうなの? でも優しいよ」

「いずれ分かる。喜助は優しいだけじゃないからな。前世の話、ありがとう。私も、お前を探すよ」

「うん。かか様――大好き」

「ああ……私もだ」

 

 無表情のまま、瞳だけが微笑んでいた。

 これが私とかか様の、最後の会話になった。


 
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