No.1193343

蓮が咲き行く道へ四話

BLEACHの二次創作です。
浦原喜助の娘の成長物語です。

2026-09-16 10:17:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:30   閲覧ユーザー数:30

四話「クソガキ眼鏡と食事」

 

「あっぶなっ!」

 

 いつものように姿を隠す術をかけて、空をふわふわ移動していた時だった。突如、鋭い風を切る音が耳を裂いた。

 

 弓矢――しかも霊力付き。

 

 反射的に身をひねって避けた瞬間、次の一射が飛んでくる。迷わず空間にしまっていた刀を取り出し、矢を弾いた。さらにもう一発――仕方なく、まとめて斬り捨てるように振るった刀が、空気を裂いて衝撃波を走らせた。

 

「うぐっ……?!」

 

 軽い脳震盪。どうやら術式の反響が相手の脳に響いたらしい。

 

 姿勢を整え、私はゆっくりと降下する。着地した先には、小柄な眼鏡の少年。倒れ込んで身動きが取れなくなっていた。見た目に反して、殺意はあった。ならば容赦する理由はない。

 

 「クソガキ。……何のつもりだ?」

 

 私は彼の腹を容赦なく踏みつけた。彼は顔を歪め、睨み返してくる。

 

 「お前、死神だろ!」

 「死神? 私は半分人間だよ。半分人間に無用な手出しはしないって教わったけど、そっちから撃ってきたよね?」

 「おじいちゃんを……おじいちゃんを返せ!」

 

 ……は?

 

 意味の分からない言葉に、顔を踏み抜こうと足に力を入れた――その瞬間、

 

 「成さん、ストーップ!」

 

 背後から急に腕を回され、ふわっと体が浮く。振り向けば、てて様が険しい顔で私を抱えていた。どうやら、私の状況を察知して急行してきたらしい。

 

 「子どもには、優しくって教えたじゃないスか」

 「狙ってきたのはあのガキ。私は“容赦するな”って、かか様から教わった通りにしただけ」

 「……成さん。この子、石田家の子どもッスよ」

 

 「だから?」

 

 私は顔をしかめた。敵意があるのは変わらない。だが、てて様は優しい目で少年を見て、私に言い聞かせるように続けた。

 

 「この子には、この子なりの事情があるッス。だから、刀を納めてください」

 「……てて様がそう言うなら」

 

 私はしぶしぶ刀を空間にしまった。てて様は安堵の息をつき、私を下ろす。

 

 負傷した少年――石田雨竜のもとに歩み寄り、軽く治癒の術をかける。正直、どうでもいい。でもてて様がうるさいから、やるだけだ。

 

 雨竜は言葉もなく、私を睨んだままその場から立ち上がり、走り去った。礼も謝罪もなかった。

 

 こうして、私と石田雨竜は最悪の出会いを果たしたのだった。

 

※

 

 ……なのに。

 

 数日後、奴が浦原宅で一緒にご飯を食べることになるなんて、誰が予想しただろう。

 

 きっかけは、かか様だった。

 お空を散歩していたらしいかか様が、私と同じように弓矢で狙撃され――泣くまで徹底的に屈服させたらしい。

 しかもその後、「お腹を空かせてたみたいで、放っておけなかった」と言って、浦原宅に連れてきたのだ。

 

 「子どもが親に放置されてるなんて、見るに堪えない。しばらくここでご飯を食べさせる」と言うかか様に、てて様は目を丸くしていたが、

 

 「……沖さんが言うなら、仕方ないスね」と苦笑いして受け入れた。

 

 最初こそ緊張していた雨竜も、山のような唐揚げを見て目の色が変わった。空腹には勝てなかったのか、黙々と食べ始めた。

 

 私も負けじと食べる。成長期の私は、いつだって全力でご飯を食べるのだ。

 

 料理当番は、私かてて様か鉄裁さん。雨竜にも手伝わせることにした。最初はツンケンしていたけど、次第に素直になっていく。

 

 正直、最初は嫌いだった。いけ好かない眼鏡野郎だと思っていた。

 でも、思い出した。――原作の雨竜のこと。

 父親に全く理解されず、孤独で、でも誰よりも誇り高かった。あれはあれで、彼なりに必死だったのだ。

 

 みんな、色んな事情を抱えてるんだ。

 

 最初は一食だけのつもりだった雨竜も、「恩を返したい」と言って、てて様と一緒に裁縫を始めた。

 そのうち店番までやるようになって、気付けば、私たちの生活の一部になっていた。


 
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