七話「原作が動き出す前に」
ある少年たちがスケボーで遊んでいて、最近亡くなった少女に捧げられていた一輪の花を差した空き瓶を倒してしまう。
一護は彼らを殴り飛ばして撃退した。
……でも、今の私から見ると、ただスケボーで遊んでいただけで倒されただけなんだよね。
そんなことを思いながら、私は空から一護を見下ろしていた。
原作開始のタイミングを確かめるために、夕方ひょいっと外に出て、こうして空へとくり出していたら、一護を発見したのだ。しばらく見ていようかと思ったところで、スマホから通知音が鳴る。
「……あ、かか様からのトークだ。なんだろ」
トーク欄には『織姫が心配してる。早く帰ってこい』の文字。
そう、もう浦原商店は私だけの場所じゃない。
最近の浦原商店には、石田雨竜、井上織姫、織姫の兄・井上昊。それに、数年前に義骸から造ったジン太と雨(ウルル)がいる。彼らは普通に成長するように調整されているので、私と違って年を取るだろう。もちろん昔からいるテッサイ(鉄裁)もいて――そして浦原一家、かか様・常沖(つねおき)、てて様・喜助(きすけ)、そして私・常成(つねなり)。
……もう、大所帯である。
でも部屋が余ってるって、空間どうなってるの? っていつも思う。
たぶん原作に備えてなんだろうけど……用意周到すぎじゃない?
とりあえず、織姫が用意したご飯が待っているらしい。
織姫の原作での独特すぎる料理センスは、私とてて様とテッサイと昊さんと雨竜の総力戦で、なんとか普通ラインに治した。味覚は原作通り変だけど、普通の料理は作れるようになった。
もう、私たちの生活に“織姫料理の被害”はない。
……あんな激しくキレたかか様を見るのは初めてだったし。
てて様が押さえて宥めて、ようやく怒りモードのかか様が元に戻ったのだ。
ほんと、てて様いないとダメだ……。普段は無表情だけど感情豊かなかか様がキレる料理って、やばい。
織姫は泣くし、私と昊さんで宥めるし、雨竜はおろおろして使い物にならなかったし……。
そんな昔のことを思い出して浸っていたら、またトークが届く。
『は・や・く、帰ってこい』
「……わかったよ、かか様……」
私は急いで返信し、浦原宅へ帰途につく。
ほんとは原作、見届けたかったんだけどな。
※
おそるおそる帰ると、てて様が入口で待ち構えていて、いつもよりほんの少しだけ眉を吊り上げていた。
「成サン……どこほっつき歩いてたんスか?」
「えー……えへへ……」
てて様の眦が上がる気配がしたので、怖くなって正直に話した。
「一護の様子見に行ってた……」
「成サンが首突っ込むのはこちらとしてもどうしようもないんスけど……沖サンを心配させてまでやる事でした?」
「……すみませんでした……」
最近、かか様の容体がまた不安定だ。
日によって感情の変化が激しくて、すぐ眠ってしまう。
てて様だって、不安でいっぱいだ。
私もそうだ。だけど、原作も気になる。
私のせいで変わってるところがあるかもしれないから。
それでも……かか様の方が大事だ。
今は――だけど。
「ほら、早くご飯食べますか。食べた後で成サンには説教ッスよ」
「……はい、てて様」
怒られると思いながらも、私は空から一護を見に行った。
でも――見に行った価値はあった。
だって一護が原作通りなら、その力に目覚めた瞬間から……
かか様の“存在の消失化”が進行するのだから。
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BLEACHの二次創作です。
浦原喜助の娘です。成長物語です。