八話「運命への宣戦布告」
浦原喜助視点。
「沖サン……」
ボクの愛する妻は、眠っている。
昨日からずっと、目を覚まさない。
頭を撫でても、変化はない。静かな寝息を立てているだけだ。
ボクは妻の常沖(つねおき)と同じ部屋で寝起きしている。夫婦で部屋を分ける必要もなかったし、何より――義骸に入った沖サンの様子を毎日見ておく必要があった。
娘の常成(つねなり)は、外見だけならもう大きいので個人部屋を与えている。
成は最近の子どもの感覚をちゃんと持っていて、アニメやライトノベルが好きだ。グッズもよく買うので、部屋の物がどんどん増えていく。科学の専門書にオカルト辞典まで混ざっているが、アニメとラノベの並べ方はぐちゃぐちゃで、本棚は完全にカオス化している。
ボクが見かねて並べ替えてあげても、数日で元のカオスに戻る。
「頭の中に順番が入ってるからいいの!」
そう言われてしまえば、ああ、やっぱりボクと沖サンの娘だな……と血筋を実感するしかない。
目に入れても痛くないほど可愛い娘だ。
正直、まだ親離れなんてしてほしくないと密かに願っている。
けれど――最近はボクも、沖サンの容体で心に余裕がなく、一昨日は成に少しきつく説教をしてしまった。
『死神』達がうろついている。
この子の存在を知られたくない。
まだ……巻き込まれてほしくない。
でも、成はもう子どものままではいられない年齢に達している。
自分で判断し動ける。
たとえ寿命が長くとも、いつかは大人になってしまう。
だから、彼女が原作に介入してしまうのも――仕方がない行動なのだ。
前世があるなら、尚更。
昨日、黒崎一護が朽木ルキアに出会い、家族が虚(ホロウ)に襲われた。そしてルキアの霊力をすべて吸い取り、『死神』化した。
その夜、ボクは朽木ルキアと接触し、役割を全うするために義骸を勧めた。崩玉を仕込んだ義骸を。
卑怯だとは分かっている。
でも、このやり方しかない――間違いないのだ。
原作通りになるなら、ボクは謗(そし)られてもやり通す。
黒崎一護で成り立つ世界。
そして、ボクはその大事なピースを回す歯車的な存在。
……はっきり言って、――うんざりだ。
ボクが愛しているのは、家族なんだ。
沖サンは黒崎一護の『死神』化によって、この世界から消えようとしている。
それが“世界的に正しいあり方”だと頭では理解している。
けれど。
ボクはもう、原作の“独り身の浦原喜助”とは違う。
愛する人を知ってしまった。
愛しい存在を育ててしまった。
深い情を持ってしまった。
手放したくない、と思ってしまっている。
何もかも違ってしまったのに、世界は『浦原喜助』という存在を都合よく求め続ける。
――なら、答えてやろうじゃないか。
沖サンを犠牲にしてまで動き出したこの世界に、宣戦布告するように。
ボクは原作の道をなぞりながら、壊せる部分は壊していく。
ボクは決めたのだ。
沖サンと、娘の成を守れるなら――何でもすると。
――大事な存在だから。
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BLEACHの二次創作です。
浦原喜助の娘です。成長物語です。
※浦原喜助の視点です。