十話「前世の約束は、生きていた」
「成ちゃーん!」
私が部屋でアニメを視聴していると、織姫がハイテンションで飛び込んで来た。
もう、高校生が帰ってくる時間帯か……。
そう思いながら、織姫に「お帰り」と返す。
「ただいま、成ちゃん! あのねあのね、今日黒崎君が学校に来たの!」
「ふーん、あの子、ちゃんと学校に行ってるんだね」
「で、私にこれお願いされたの。『遅くなってすまんって言ってくれ』って」
織姫が差し出したのは、細かく書き込まれたメモが十数枚。
小学生の頃、なんでもいいから噂を聞いたら教えてと――私が彼にお願いした、あの口約束。
彼はあれ以来、噂を聞けばこうしてまとめて定期的に渡してくれている。
今は死神として忙しいから浦原商店には来られないようだ。
何も言わないが、私達が何年も歳を取らないことから、すでに“人間ではない”と気づいているはず。
けれど、突っ込んではこない。
でも――そろそろ疑問に思う頃だろう。
『死神』が、彼の目の前に現れたのだから。
かか様はあれから消失化が進み、起きていられる時間が減ってきた。今は感覚的に三日置きに起きるほどだ。それももっと酷くなるかもしれないと、てて様は言っていた。
てて様は井上織姫の兄・昊(そら)に、会社を辞めてこちらで働いてほしいと頼んでいた。
昊も準備を進めていたようで、経営を学び、間もなく仕事を引き継ぐらしい。来月には浦原商店の店主後継者になる予定だ。
彼には霊力の適性もあるらしく、織姫と共に修行が課されることになる。
雨竜は中学生の頃から修行を受けていて、独学だった以前より腕を上げたと自信を見せている。
帰って来た雨竜は、てて様に頼まれたハンドメイド作品を作っている。私がネットに掲載したところ欲しい人が殺到し、店の目玉商品になった。財布から服まで何でも作れるため注文は絶えず、予約待ちの状態だ。
日々、雨竜は作品を作り、梱包し、発送している――もう立派なハンドメイド作家で、家の売上に大きく貢献している。
あんなツンケンしていた小さな雨竜が、この家に馴染んで貢献までしているなんて……。
昊さんも来月から本格的に従業員になる。
原作を壊し、選んだ選択が温かい形になっていくなんて、思いもしなかった。
これだけは――変えてよかったと思う。
居場所を与えることができて、私は嬉しい。
私はにこにこと笑う織姫の頭を撫で、メモに目を落とした。
『白髪に赤目の、二十歳くらいの青年を見たという。その青年は“浦原常成”を知らないかと聞き回っていたらしい。成、気をつけろ』
一護の短い警告と共に記された、それは読み捨てる事のできない噂だった。
――あの子が、来たのか?
学園都市から、どうやってここへ?
胸の奥で、心臓が知らず早鐘を打つ。
そして私は、安堵と共に笑い――泣いていた。
「成ちゃん!? どうしたの、嫌なこと書かれてた!?」
違うよ、織姫。
これは――私の前世が報われた瞬間。
あの子が私を忘れず、探してくれたという現実が、嬉しくてたまらないんだ。
私の現実は、確かに変わっていく気がした。
|
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
BLEACHの二次創作です。
浦原喜助の娘で、成長物語です。
※とある魔術の禁書目録のクロスオーバーも入ってます。